美容に使われるクレイにはとても多くの種類があります。
例えば、グリーンクレイと呼ばれるクレイがありますが、その実は「グリーンイライト」もしくは「グリーンモンモリロナイト」のいずれかです。
イライト系クレイとモンモリロナイト系クレイは 鉱物(ミネラル)組成比率も違えば化学組成も違うので、当然クレイの用途も変われば 効能・効果も違うため、何系のクレイなのか見分ける必要があります。
ここでは クレイの種類、鉱物組成比と化学組成比を総合的にまとめてます。
ミネラルは ヒトが生命活動に必要なカラダを構成する元素で、5大栄養素(タンパク質、脂質、糖質=炭水化物、ビタミン、ミネラル)の一つ。
クレイに含まれる天然ミネラル |
カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、マンガン、銅、ケイ素、アルミニウム、チタン |
(モンモリオナイト=モンモリロナイトは同義語なので、ここでは モンモリロナイトと表記します)
ガスール(ラスール)| Ghassoul
ガスール(もしくはラスール)はモロッコ北部の都市フェズから北東へ200km離れたアトラス山脈麓の砂漠地帯の鉱山だけで採掘される約 1~2億年前の火山灰が堆積してつくられたクレイ。
アトラス山脈はモロッコ→アルジェリア→チュニジアをまたがり、サハラ砂漠とアルボラン海を隔てています。
北アフリカや南欧州では、8~12世紀ころから美容クレイとして使われて来ました。
Ghassoul(Rhassoul)は、アラビア語で「洗う」の意味。
鉱物組成 | ガスール
ガスールは 粘土鉱物スメクタイトグループのスティーブンサイトに属す鉱物粘土です。
スメクタイトの仲間には ほかによく知られるモンモリロナイトやベントナイトがあり、ガスールはそれらと同様の効能・効果を持ちます。(鉱物の細かい組成比は あまり知らべ切れませんでした)
化学組成比(天然ミネラル) | ガスール
ガスールの化学組成比のほぼ半分は 二酸化ケイ素が 50 – 60%で、次に多く含むのが 酸化マグネシウムの 20%。
ほかは 酸化アルミニウム 5%、酸化カルシウム 3%、酸化鉄 2%、酸化カリウム 1%、酸化ナトリウム 1%、酸化チタン 0.5%。
グリーンイライト | Greeen illite
グリーンイライトの採掘量が一番多いのは フランス中西部 シェンヌ・デ・ピュイ火山群サン・ポリアン村です。
通称グリーンクレイとも言われますが別途、カオリン系のグリーンクレイがあるので、こちらはグリーンイライトと覚えておいたほうがいいでしょう。世界で一番使用される人気のクレイです。
》 グリーンイライト(フレンチグリーンクレイ)| 作り方と使い方
鉱物組成比 | グリーンイライト
全体のほぼ半分(40 – 60%)はイライトが占めてます。ほかに カオリナイト 15 – 20%、モンモリロナイト 15 – 20%、カルサイト 10%以下。Les Argiles du soleil(レ・ザルジレ・ドゥ・ソレイユ)製はクオーツが 15%含有されていて カオリナイト 15%、モンモリロナイト 20%、イライト 50%となってます。
化学組成比(天然ミネラル) | グリーンイライト
※ 以下、すべてのクレイの化学組成比率は、メーカーによって違うため数値はおおよその間を取ってます。
グリーンイライトの化学組成比は 二酸化ケイ素 40 – 50%、酸化アルミニウム 17 – 25%。双方で ほぼ60 – 70%を占めてます。
ほかは 酸化カルシウム 3 – 8%、酸化鉄 6 – 12%、酸化カリウム 3 – 8%、酸化マグネシウム 2 – 3.5%、酸化ナトリウム 1 – 3%、酸化マンガン 0.1 – 0.15%、酸化チタン 0.6 – 0.9%、酸化リン 0.2 – 0.25%。
イエローイライト | Yellow illite
イエローイライトの採掘地はグリーンイライトと同じフランス リオン南西部に位置する シェンヌ・デ・ピュイ山麓ですが、レッドイライトの採掘地にほど近い場所です。
イエロークレイ 名称の由来は 酸化鉄や水酸化鉄を多く含有してるため黄色がかってること。グリーンイライトと同時に使用する場合があります。
鉱物組成比 | イエローイライト
イエローイライトの鉱物組成比は 50 – 60%、カオリナイト 15 – 25%、モンモリロナイト 10 – 15%、クオーツ 5 – 10%、カルサイト 2 – 5%。
化学組成比(天然ミネラル) | イエローイライト
イエローイライトの化学組成比は ほぼ半分が二酸化ケイ素 50 – 70%。次に多い酸化アルミニウムは グリーンイライトより多い比率で 20 – 28%。
ほかは 酸化カルシウム 1 – 4%、酸化鉄 6 – 6.5%、酸化カリウム 2 – 4%、酸化マグネシウム 1 – 3%、酸化ナトリウム 1 – 3.5%、酸化チタン 1%。
二酸化ケイ素比がグリーンイライトより若干多いため、粘り気が少し強いです。
グリーンモンモリロナイト | Green Montmorillonite
グリーンモンモリロナイトは フランス中部のロワール地域で採掘されます。
鉱物組成比 | グリーンモンモリロオナイト
グリーンモンモリロナイトの多くを占める鉱物は モンモリロナイトの 30 – 40%と、イライトの 30 – 35%。双方を合わせて 70%以上。
他のクレイに比べてクオーツを多く含み 15 – 25%。ほかは カオリナイト 5 – 15%。
化学組成比(天然ミネラル) | グリーンモンモリロナイト
グリーンモンモリロナイトの化学組成比の半分が 二酸化ケイ素の 50 – 55%。次に 酸化アルミニウムが多く 21 – 24%。そして酸化鉄 6 – 13%と続く。
ほかは 酸化カルシウム 2 – 3.4%、、酸化カリウム 3 – 7%、酸化マグネシウム 3 – 4%、酸化マンガン 0.15 – 0.35%、酸化チタン 1%、酸化ナトリウム 1%。
ホワイトカオリン | White Kaolin
美容クレイとして使われるのは 主に、フランス北東部のブルターニュ地方や米国ジョージア州、英国で採れるホワイトカオリンです。
名前の由来となった中国の高嶺(Kaoling / カオリン)で採掘されるカオリンは 磁器などに使われることが多いようです。
鉱物組成比 | ホワイトカオリン
ホワイトカオリンの鉱物組成は カオリナイトが 95 – 99%と、ほぼピュアカオリンと言えます。
化学組成比(天然ミネラル) | ホワイトカオリン
ホワイトカオリンの化学組成も ほかのクレイと比べ単純で、二酸化ケイ素 50 – 66%、酸化アルミニウム 23 – 36%。この双方だけでほぼ 90%を占めてます。
そのほかは 酸化鉄 0.8%、酸化カリウム 0.5 – 2.5%。
レッドイライト | Red illite
レッドイライトは 70%もの高いイライト比で組成されており、グリーンイライトやイエローイライトよりも効能・効果が強いため、フェイスパックなど首から上の使用はできません。
鉱物組成比 | レッドイライト
イライト 70%、カオリナイト 10%、クオーツ 10%。
化学組成比(天然ミネラル) | レッドイライト
二酸化ケイ素 48 – 64%、酸化アルミニウム 18 – 26%、酸化カルシウム 0.6 – 1.3%、酸化鉄 4 – 9%、酸化カリウム 3 – 8%、酸化マグネシウム 0.4 – 3%、酸化ナトリウム 0.1 – 2.7%、酸化チタン 0.1 – 1%、酸化リン 0.1%。
ピンククレイ | Pink Clay
最後に、よく売られてるピンククレイについて。
ピンククレイはレッドイライトとホワイトカオリンをブレンドしたクレイなので、ほかのピュアクレイと一線を画します。当然ブレンドの比率によって効能・効果に差異が出ますが、わざわざ「ピンククレイ」と称して販売されてるほど人気があります。
市販されてるピンククレイのなかで代表的なアロマフランスのブレンド比率が次のようになってます。
鉱物組成比 | ピンククレイ
ホワイトカオリンを 70%以上、レッドイライト 10%以上配合して作られます。
ほかに モンモリロナイトとクオーツが微量。
化学組成比(天然ミネラル) | ピンククレイ
ピンククレイの化学組成比は 二酸化ケイ素の 65%と、酸化アルミニウムの 24%。双方合わせて全体のほぼ 90%を占めます。
ほかは 酸化カルシウム 0.5%、酸化鉄 4%、酸化マグネシウム 0.5%、酸化ナトリウム 0.1%、酸化チタン 0.1%。
ベントナイト | Bentonite
モンモリロナイト グループに属するベントナイトは ほぼ世界各地で採掘できる用途の広いクレイです。
米国ワイオミング州のFort Bentonで見つけられた白亜紀層(1億4500万年前~6600万年前)の鉱床が、技術雑誌に”Benton”と命名され発表されたことでベントンと言われるようになりました。
主な産出地は北米ワイオミング州をはじめ世界生産量の1/3は米国です。次いで中国、ギリシャと続きます。
日本にも山形県、宮城県、新潟県、群馬県、青森県、島根県、岡山県に鉱床があります。
鉱物組成率 | ベントナイト
モンモリロナイト 47 – 50%、クオーツ(石英)37 – 40%、斜長石 4 – 5%、方解石 3 – 4%、苦灰石 2 – 3%、方沸石 3 – 4%、黄鉄鉱 1%。
化学組成比(天然ミネラル) | ベントナイト
二酸化ケイ素 70 – 72%、酸化アルミニウム 13 – 14%、酸化カルシウム 2 – 3%、酸化鉄 1 – 2%、酸化カリウム 0.1 – 1%、酸化マグネシウム 2 – 3%、酸化ナトリウム 2 – 3%、酸化マンガン 0.1 – 1%、酸化チタン 0.1 – 1%。
フラー土(フラーズアース)| Fuller’s Earth
フラーズアースの主な鉱物組成は モンモリロナイト、カオリナイト、アタパルジャイト(または パリゴルスカイト)で組成されてます。
フラーズアースは モンモリロナイト グループに属するため、なぜ別のグループであるカオリナイトを含んでるのか、少し疑問が残ります。
世界各地で採掘されますが、地域によっては モンモリロナイト系のカルシウムベントナイトで組成されてるフラーズアースもあり、白亜紀以降の火山灰堆積によって生成された粘土鉱物です。
フラーズアースはフィロケイ酸塩鉱物に属しますが、化学組成比については 細かく分析された資料を未だ見つけられず、これ以上書けておりません。いずれ新たな資料が発見できた暁に追記します。
フラーズアースを原料とした美容クレイで有名なのが、イタリア クレイのアルジタル(ARGITAL)で、グリーンクレイとして販売しています。
フラー土を使用した記事はこちら 》 フラー土のクレイ製品
粘土鉱物 | クレイのグループ
そもそも美容クレイに使われてる粘土鉱物と言っても、どんな粘土なのか?
美容クレイに使われる粘土鉱物はすべて フィロケイ酸塩鉱物(層状ケイ酸塩鉱物)に属します。
次に大きく2つ、蛇紋石(じゃもんせき)グループと 雲母グループに分けられます。
さらに蛇紋石グループには、カオリン グループ(三斜晶系鉱物)と スメクタイト グループ(単斜晶系鉱物)があり、美容クレイとして一番使用されるイライトは 雲母グループに属します。
スメクタイトグループは さらに、モンモリロナイト グループ、スティーブンサイトに分かれ、ベントナイトはモンモリロナイトに属し、ガスールはスティーブンサイトに属します。
カオリン グループ | カオリナイトのみ
カオリン グループには カオリナイト(高陵石)のみがあり、通称 カオリン(Kaolin)と呼ばれます。
17世紀初頭、フランスの宣教師が中国景徳鎮高陵(カオリン)から持ち帰った粘土に「カオリン」と命名して紹介したことに由来してます。
※現在、まだまだ追加記事を編集中です。しばらくお待ちください。